新年のご挨拶に代えて

慶應義塾体育会野球部 監督 堀井哲也

2020年の東京六大学リーグ戦は、春は真夏に1回戦総当たり(勝率)秋は2回戦総当たり(ポイント制)で行われました。正に異例の開催となりましたが、生活の基盤を根本から揺るがすコロナ禍において、開催と運営にあたる各方面の関係者の皆様には、想像を絶するご苦労があったと思い、そのご努力に対し心から感謝と敬意を表します。又、秋季リーグ戦の優勝インタビューでの早大・小宮山悟監督の「一人の感染者もなく日程を終了した事は、六大学部員全員の勝利だ」との発言は、必死に戦った仲間に対する最高のエールでした。

昨年の塾野球部はスタートにあたり、チームスローガンを「本氣」と選手間で決めました。その文字通りあらゆる事にどう取り組んでいくのか、監督としてワクワクする気持ちで見守ってました。基本を徹底した冬季練習、2班に分かれての米国遠征と鹿児島合宿を経て、3月のオープン戦と極めて順調にチーム造りが進みました。ここで緊急事態宣言を受けての体育会活動の自粛期間という不測の事態を迎えました。先の見えない不安と戦いながら、この間のチーム全体でのオンラインミーティングや選手個々の技術・体力トレーニングへの取り組みが、正に昨年のチームの底力を発揮した場面だったのではないでしょうか。ややもすれば春先の調子を落とすところを、見事にチーム力を上げて真夏に開催された春季リーグ戦に挑む事が出来たと手応えを感じておりました。リーグ戦の結果はご承知の通り春・秋共優勝をかけた試合をものに出来ず、非常に残念な結果となりました。しかしながら、瀬戸西主将を中心に4年生が各自の役割を全うしたチームは学生野球の模範であり、立派でした。私事で恐縮ですが、大学監督就任1年目でこのようなメンバーに巡り会えた事は、幸せであり、同時に勉強になりました。

4年生が卒業し、新チームは福井主将を中心に、森田、正木、渡部等下級生から神宮の大舞台を経験したメンバーが4年生となります。3年生以下にも増居、生井、下山、宮尾、廣瀬と主力選手が目白押しで揃っており、非常にバランスの良いチームになる事が予想されます。塾野球部の真髄は、200人近い部員の熾烈な競争で選ばれたメンバーを、ひとたびリーグ戦が始まれば全員でサポートする姿勢にこそあります。昨年の結果を振り返ると最後の詰めの部分に意識がいくのは当然です。その点も含めて勝敗というのは非常に多くの要素が絡み合った結果であり、ここ一番で勝てるチームは一朝一夕には仕上がりません。日々「練習ハ不可能ヲ可能ニス」取り組みを積み上げて参ります。

2021年1月
堀井哲也